何から逃げているのか?

天国大魔境を2巻まで読んだ。

「このマンガがすごい! 2019」の、オトコ編1位だとか。

壁に囲まれた楽園で暮らす子供たちと、その外の崩壊した世界で暮らす人々の話。

 

たとえば「約束のネバーランド」。たとえば「Dead by Daylight」。たとえば「天国大魔境」。

ここ数年はそんな、閉鎖された世界で、絶対的な存在から逃げたり、あるいは立ち向かったりというストーリーの作品がヒットを続けている。

もちろん個々の作品の魅力は疑いようがないが、これが「売れている」ということは、これが世間に「受け入れられている」という意味であり、もっと言えば「望まれている」からこそ、こういった形で世に出てきていることになる。

今の世の中において、絶対的な存在に対抗するというストーリーは、なんだか風刺的にも思える。

f:id:eidosoor:20190429155844j:plain

Amazon CAPTCHA

さて、表題のランキングで1位を獲得しているのはなぜなのか(何が受け入れられたのか)を考えるべく、同作を読んでみたわけだが、率直に言って、初めはいまひとつわからなかった。

デフォルメされたわかりやすい魅力が提示されるわけではなく、淡々と映像的に描写して、少しずつ謎が解けていくタイプのストーリーで、伏線の張り方は巧みで「絶妙になにかがありそう」と予感させられる。

 

わかりにくいタイプの作品なのに、なぜこうも受けているのか。そういった描写の仕方は、現在では忌避される傾向にあったのではないか。

少しネットで探ってみると、評価している人の大半が、元からの作者のファンだった。これまで積み重ねてきた読者との信頼関係を担保に、こういった話作りに踏み込んだわけだ。

この事実は僕の中に、相反する2つの感情を残した。